生息域外保全とは

希少な野生動物は、本来であれば自然の中、つまり、生まれ育った生息地そのもので守られるべき存在です。しかし、現実には、生息地内での保全(生息域内保全)だけでは間に合わない状況も少なくありません。そうした場合、種の絶滅を回避するために、生息地から人工的な施設へと一時的に個体群を移し、保存や繁殖を行って個体数の増加を図る手法が用いられます。これを「生息域外保全(Ex-situ Conservation)」と呼びます。

【飼育下での保全における問題点

生息域外保全の実施には、施設・人材・資金といった多くの資源が必要不可欠です。しかしながら、収益性の乏しい保全活動を、行政機関や民間企業の一部門である動物園・水族館が、既存の組織体制の中で継続的に担うことには限界があります。とくに、絶滅の危機が差し迫る種に対しては、迅速な意思決定と柔軟な運営体制が求められます。そのような状況に対応するため、私たちは組織の枠を越えた協働と、主体的かつ即応的な保全活動を可能とする独立機関が必要と考え、本センターを設立しました。

野生生物生息域外保全センターの機能と専門性

当センターは、行政、大学、動物園、水族館、昆虫館などと連携し、種の状況に応じた柔軟で機動的な生息域外保全体制の構築を目指しています。絶滅リスクの高い種を速やかに受け入れられる体制を整えつつ、多様な分類群に対応する施設環境を継続的に維持・拡充しています。当センターの強みは、対象種に適した気候・生息条件を導き出す分析力と、それを飼育環境に実装するデザイン力にあります。建築環境学の知見を活かした施設設計により得られた知見は、将来的な生息地保全への貢献を視野に、関係機関と共有しています。

当センターはこれら使命を果たすために、以下について整備・維持します

累代繁殖と系統保存のために、大きなキャパシティを持つ。

様々な種に対応するために、多様な室内外気候デザインを可能とする質の高い建築設備を維持する。

素早い意思決定と様々な状況に対応するために、フレキシブルかつ持続可能な運営形態を維持する。